【撮影指示書の落とし穴】「入場シーンを前から&後ろから撮って」は絶対無理!カメラマンを困らせる“物理的に不可能な指示”とは?

「インスタで見た、扉が開いた瞬間のバックショット(後ろ姿)が素敵!」
「でも、入場してくる二人の緊張した表情(正面)も絶対欲しい!」
せっかくの結婚式、あらゆるアングルから最高の瞬間を残したい気持ちは痛いほど分かります。
しかし、作成した撮影指示書の中に、「同じタイミング」で「全く違う場所からのアングル」を詰め込んでいませんか?
実はこれ、カメラマンが一人だけの体制では「物理的に不可能」な指示なのです。
この記事では、多くの花嫁さまが無意識に書いてしまう「無理な撮影指示」の実例と、それを叶えるための現実的な解決策を解説します。
その指示、カメラマンが2人いないと撮れません!
よくある「不可能な指示」の代表例がこちらです。
ケース:挙式の入場シーン
指示①: 扉が開いた瞬間、チャペルに向かう二人の「後ろ姿(バックショット)」と、広がるバージンロードを撮ってほしい。
指示②: 扉が開いた瞬間、ゲストの拍手に迎えられる二人の「正面の表情」を撮ってほしい。

【現実】カメラマンは「瞬間移動」できません
この2枚を撮るためには、カメラマンは以下の動きをしなければなりません。
1,扉の外(二人の後ろ)にスタンバイしてシャッターを切る。
(※ここで扉が開き、二人が歩き出す)
2,二人が歩く速度よりも速く、忍者のようにチャペル内へ移動し、バージンロードの先(祭壇側)までダッシュで回り込む。
3,息を切らさずに構えて、正面からシャッターを切る。
これは物理的に不可能です。
もし無理にやろうとすれば、カメラマンがバージンロードを全力疾走することになり、厳かな挙式の雰囲気をぶち壊してしまいます。
他にもある!よくある「物理的に無理」な指示リスト
「入場」以外にも、ついつい書いてしまいがちな「体一つじゃ足りない指示」があります。
「誓いのキス」の瞬間に…
指示A: 二人の顔のアップ(表情重視)
指示B: チャペル全体とゲスト全員が入った超ロングショット(雰囲気重視)
→ レンズの交換やズーム操作、立ち位置の移動が間に合いません。どちらか一方は撮り逃すか、中途半端な画角になります。
「手紙朗読」の瞬間に…
指示A: 泣きながら読む新婦の表情(高砂側から)
指示B: それを聞いて涙する両親の表情(親族席側から)
→ 新婦と両親は「対面」に位置しています。カメラマンがその間を何度も往復すると、感動的なシーンで「カメラマンが視界に入って邪魔」という事態になります。

無茶な指示を出すとどうなる?「共倒れ」のリスク
「プロなんだから、なんとかしてよ!」と思うかもしれません。
しかし、物理的に無理な指示を強行すると、以下のような悲劇が起こります。
1,どっちつかずの失敗写真になる
両方撮ろうと焦って動き回った結果、ピントが合っていなかったり、構図が斜めになったりと、両方とも微妙な写真になります。
2,挙式の雰囲気が壊れる
カメラマンがバタバタと走り回る足音や気配は、ゲストの集中力を削ぎます。
3,大事なシーンを撮り逃す
移動に時間を使っている間に、「お父様と目が合った瞬間」などの決定的シャッターチャンスが終わってしまいます。
それでも撮りたい!叶えるための3つの解決策
では、どうすれば希望のカットを残せるのでしょうか?解決策は3つあります。
解決策1:【課金】カメラマンを「2名体制(2カメ)」にする
これが最も確実で、唯一の解決策です。
メインカメラマンが「正面」を、サブカメラマンが「後ろ姿」や「ゲストの表情」を狙う。
これなら、一瞬の出来事を多角的に、漏れなく残すことができます。予算は上がりますが、写真にこだわりたいなら「2カメ」は必須です。
解決策2:【優先順位】「どっちがマストか」を決める
1名体制なら、潔くどちらかを諦める勇気も必要です。
「ドレスのトレーンを綺麗に見せたいから、後ろ姿をマストで!」
「父の表情を残したいから、正面をマストで!」
このように優先順位(マスト)を伝えれば、プロはその1枚を最高クオリティで残してくれます。
解決策3:【演出】リハーサルや「やらせ」で撮る
実は、多くの「素敵なバックショット」は、本番中ではなく「挙式リハーサル」や「挙式直後の撮影タイム」に撮られたものです。
入場シーンの後ろ姿: リハーサルの時に撮ってもらう。
入場シーンの正面: 本番で撮ってもらう。
これなら、1名のカメラマンでも両方のカットを落ち着いて残すことができます。プランナーに「リハでこのカットを撮れますか?」と相談してみましょう。
まとめ:指示書は「分身の術」の注文書ではない
SNSで見かける素敵な写真は、それぞれ別の結婚式の、別の瞬間のベストショットを集めたものです。
それらをパズルのように組み合わせて、一回の結婚式で全て再現しようとすると、必ず無理が生じます。
・カメラマンは一人しかいない(体は一つ)
・同じ時間の「あっち」と「こっち」は同時に撮れない
この「当たり前の物理法則」を理解した上で指示書を作ることが、カメラマンのパフォーマンスを最大化し、結果として最高の一枚を残す近道になります。
迷ったら、プランナーやカメラマンに「この2つのカット、一人で撮れますか?」と素直に聞いてみましょう。プロならではの代案を出してくれるはずですよ!

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